今日は子供の頃に食べたアイスクリームを再現しようと思う。 そのアイスクリームは亡くなった母が作ってくれたもので、卵の味がするとても美味しいアイスクリームだった。 小学生の低学年の頃まで時々作ってくれていたように記憶している。
大人になってから、ふとそのアイスクリームのことを思い出し、母に作り方を聞いてみたことがある。 しかし、作り方どころか、アイスクリームを作ってくれていたことすら覚えていなかった。 『覚えていないものは仕方がない』と、そのアイスクリームを再び食べることは諦めていた。
しかしなぜか最近になって、そのアイスクリームを無性に食べたくなってしまった。 そんな事情があり、子供の頃の記憶を頼りに思い出のアイスクリームを再現しようと思った次第である。
味について覚えているのは、市販のアイスクリームに比べて卵の味が強かったということ。 もう一つはシャリシャリ感が強かったということだ。
ただし、ロッテの "爽" のように小さな氷が入っているという感じではなかった。 例えるなら、霜柱を踏んだときのような感じだろうか。 擬音で表現するなら "キュッキュッ" が近いかもしれない。
調理中の様子で覚えているのは、容器に入れて冷凍庫で冷やして固めていたということ。 アイスクリームメーカなんていうブルジョアなものは当時の我が家には無かった。
ちなみに、冷凍庫に入れた後に時々混ぜていた、なんてことはしていなかった。 冷凍庫に入れた後は、固まるまでただ待っていたように思う。
それ以外に覚えているのは、手動ハンドミキサーで何かを泡立てていたことだ。 容器に材料を入れてフタをし、フタに付いているハンドルを回すと中身が泡立てられていた。 何を泡立てていたのかは覚えていない。
ハンドミキサーで泡立てる材料となると、生クリームが思い浮かぶ。 ただし、我が家では生クリームなんて滅多にお目にかかることはなかった。 教育のためになることには金を使う母だったが、子供に贅沢させるようなことはなかった。 子供のオヤツに生クリームを使うなんて考えられない。
生クリーム以外で泡立てる食材といえば、卵白だろうか。 卵白を泡立ててメレンゲを作り、そこに他の材料を混ぜれば空気をたっぷり含ませることができるだろう。 それなら、アイスクリームメーカを使わなくてもふんわりしたアイスクリームを作れる。 また、"キュッキュッ" という食感も凍った卵白だと考えれば納得だ。
ただし、それだと牛乳は使えないだろう。 牛乳にメレンゲを混ぜようとしても牛乳にメレンゲが浮くだけだ。 よって牛乳は使わない、というか使えない。 でも、それだと乳製品は含んでいないことになる。 つまり、"アイスクリーム" ではなく、"アイス" だったのだ。
そんなわけで、"卵アイスクリーム" ではなく "卵アイス" を再現してみようと思う。 考えた工程は、
というものだ。 子供の頃の記憶と己の勘を信じてやってみる。
使用する食材・機材は以下の通り。 なお、塩や砂糖・キッチンペーパーやフリーザバッグ・アルミホイル・鍋やキッチンばさみなど、ほとんどの家庭で常備されているものは省略している。
まずは準備だ。 食材や電動ハンドミキサーやボウル・容器などを用意する。
卵2個・砂糖小さじ4・バニラエッセンスを準備する。 食材はたったこれだけ、お手軽簡単だ。
アイスを固めるための容器を冷凍庫へ入れておく。 本当なら底が平らなバットがいいのだろうが、我が家にはちょうどいい大きさのバットがないのでボウルで代用する。
準備は完了した。 では、卵アイス作りに挑戦だ。
卵を割って卵黄と卵白に分ける。 なお、この道具はダイソーで買った "黄身だけ君" という商品だ。 とても便利な商品だが、コスト削減のためか裏返すと窪みがたくさんある。 だから、洗うのにとても苦労する。
電動ハンドミキサーで卵白を泡立てようとするが、泡がきめ細かくならない。 うーん、ひょっとして砂糖を入れなければいけなかったのかな。
準備しておいた砂糖の約半分を足してみると、きめ細かい泡ができるようになった。 うーむ、菓子作りは奥が深い。
1分もかからずに羽根から落ちない程度に泡立てることができた。 さすが電動ハンドミキサーだ。 もしかしたら、"手作りアイス" とは名乗れなくなったのかもしれないが。
別のボウルに卵黄・残しておいた半分の砂糖・バニラエッセンスを入れる。 でも、どうやって混ぜればいいのだろうか。 さっくりとヘラで混ぜればいいのか、それとも電動ハンドミキサーでしっかり混ぜるべきか。
しっかり混ぜたほうが良さそうな気がする。 ただし、卵白を混ぜた電動ハンドミキサーはまだ羽根を洗っていない。 もう1台の電動ハンドミキサーを用意し、それで混ぜることに。 我が家にはなぜか電動ハンドミキサーが2台あるので助かる。
しばらく混ぜていると全体的に白っぽくなった。 空気をたっぷり含んでくれたようなので、これで良しとしよう。
卵黄のボウルに、先ほど泡立てた卵白を混ぜ入れる。 泡が消えないようにヘラでさっくりと混ぜ入れるが、加減が難しい。
どこまで混ぜればいいのか判断に迷うが、色ムラがなくなるまで混ぜることにする。 卵黄の黄色と卵白の白色が色ムラにならないところまで混ぜてみる。
完全に色ムラを無くすことはできなかった。 あまり時間をかけると泡が消えてしまうので、これでいいことにする。
冷凍庫で冷やしておいた容器に移し入れる。
冷やし固めるため冷凍庫へ入れる。 空気を含んでいて密度が低いのですぐに固まりそうだが、あえて一晩放置することにする。 明日の試食が楽しみだ。
冷凍庫に入れて一晩が経った。 卵アイスはどうなったかな。
冷凍庫から出してみる。 見た目は冷凍庫へ入れた時点からあまり変化していない。 泡はちゃんと残っているようで安心した。
では、皿に盛ってみる。 あ、ちなみに皿も事前に冷凍庫へ入れておいたのでキンキンに冷えている。
うーむ、スプーンですくってみると、分離した卵黄が少しだけだが底の部分に沈殿している。 金属容器で、しかもあらかじめ冷凍庫に入れて冷やしたおいたのに分離するとは。
うん、見た目はすごく美味しそうだ。 卵黄の黄色のおかげで高級感のあるアイスになっている。 卵たっぷりアイス、という感じに見える。 まあ、ほぼ卵しか使っていないが。
出来上がった卵アイスを食べてみると...そう、この味・この食感だ。 子供の頃食べた懐かしいアイスを再現できている。 凍った卵白のシャクシャク感は昔のままだ。 しかも、大人になった今食べてもなかなか美味い。
大大大満足の卵アイスだった。 子供の頃の思い出補正で美味しく感じていた、というだけではなく今食べてもなかなか美味しかった。
もちろん、牛乳や生クリームを使ったアイスクリームの方が断然美味い。 でも、乳製品を使っていないことを考えれば立派な味だと思う。
卵・砂糖・バニラエッセンスで作れるというのも簡単でいい。 ほとんどの家に常備されている食材で作れるというのは高評価だろう。